Webブラウザ「Microsoft Edge」とは

 

そもそも「Webブラウザ」って?

Webサイトを閲覧するためには、専用のアプリケーション「Webブラウザ」(以下ブラウザ)が必要です。
例えばお手持ちのスマートフォンであれば、iPhoneには専用ブラウザ「Safari(サファリ)」が組み込まれています。Androidであれば「Google Chrome(グーグルクローム)」がありますね。
パソコンでも同じように、Windowsをご利用であれば、Windowsのバージョンによりますが、Micosoft社製ブラウザ「Internet Explorer(インターネットエクスプローラー)」もしくは「Microsoft Edge(マイクロソフト エッジ)」があらかじめインストールされています。
上記以外でも、例えば「Firefox」というブラウザはWindows、Mac、iPhone、Androidで使用できる最も有名なブラウザの1つで、Mozilla(モジラ)という非営利団体が開発しており、アドオンと呼ばれる拡張機能を追加し、自分好みにカスタマイズできるという特徴があります。

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と、ここまでは普段からインターネットを利用される方であればご存じかと思います。
今回は上記ブラウザのうち、「Microsoft Edge」に焦点を当てたいと思います。

 

「Microsoft Edge」の成り立ち

「Microsoft Edge」(以下Edge)は、それまで開発されていた「Internet Explorer」(以下IE)の後継にあたるブラウザです。

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2015年からリリースされている最新のOS「Windows10」から組み込まれており、デザインはもとより、Windows10に最適化された機能性、例えばこちらもWindows10から組み込まれた音声認識技術「Cortana(コルタナ)」との連携や、タブレット端末での使いやすさも想定した、注釈を手書きできる機能などが追加されるなど、大きく進化しました。
さらに基幹部分にも改良が加えられ、レンダリングエンジンと呼ばれるブラウザの基本機能(HTMLなどを含む専用言語で書かれたデータを解釈し、レイアウトやデザインなどを画面に描画する仕組み)は、従来のIEで利用されていた「Trident」をベースとし、新たに「EdgeHTML」という技術で実装されました。

このレンダリングエンジンの改良は、とくにWebサイトやサービス開発者にとって非常に重要な意味がありました。
というのも、それまで利用されてきたIEは、Windows95に初めて搭載されてから実に20年近くバージョンアップを繰り返してきた、かなり古株のブラウザとなります。従来のレガシーコードを踏襲しつつ開発されたため、次第に新しい言語コード、例えばHTM5やCSS3など、いわゆるウェブ標準に準拠するタイミングが遅くなったり、ブラウザシェアは独占的な状況ゆえに悪意ある攻撃者のターゲットとされ、そのためのセキュリティアップデートを重ねる必要があったりと、様々な課題を抱えていました。

そんな中、2005年頃から徐々にIEの独占状態は崩れていきます。

後発であるFirefoxGoogle ChromeSafariといった新興ブラウザがこの頃から注目を集め、ウェブ標準に準拠した仕様やIE独自のセキュリティホールが存在しない点はもちろん、ウィンドウをタブごとにまとめるタブブラウズ機能や、RSSから最新情報を常にチェックできるフィード機能などの新技術、軽快な動作などを強みに、順調にシェアを伸ばし始めました。

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さらに2009年、IEWindows自体に組み込まれていることによって「抱き合わせ販売」となり、市場での地位を独占しているとして、欧州では独占禁止法違反となりました。その和解策として、消費者がIE以外のブラウザも利用できるよう、デフォルトブラウザの選択画面をOSに組み込むようになりました。これもIEのシェアが低下した一つの要因になります。

そういった状況を踏まえ、Windows10リリースタイミングでのEdge公開はもはや必然でした。
「現代的なウェブとの相互運用性」をとくに重視されたEdgeブラウザは、ウェブ標準技術への対応やセキュリティ対策、軽量化など、それまでのIEにあった多くの弱点を克服し、モダンブラウザの仲間入りを果たします。

 

新生Microsoft Edgeの誕生

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こうしてEdgeブラウザはより改良を加えられたIEとしてデビューしました。従来のIEから進化したこのブラウザなら、より使われるようになるだろう、といったMicrosoftの目算は、しかし狙い通りにはいきませんでした。
主な理由は大きく2点あります。

1点目は、Edgeが公開されるまでの間、前述の通りFirefoxやGoogle Chrome、Safariのような他社ブラウザの隆盛もあり、ユーザーにとってはわざわざ移行するメリットがなかった、という点です。
2点目は、開発者側での対応も進まなかった点が挙げられます。

少し話がそれますが、他社ブラウザのレンダリングエンジンについて、Google Chromeは「Blink(ブリンク)」を、Safariは「WebKit(ウェブキット)」を使用しています。これらはもともと同じオープンソースプロジェクトのもと開発が進められた、いわば兄弟のような関係です。そのため、当然Webサイトの描画能力等も共通なので、どちらもほぼ同じ表示形式で、かつ開発者が意図したとおり表示できます。一方Firefoxは「Gecko(ゲッコー)」を使用していますが、こちらもWeb標準に準拠した仕様のため、ほぼ問題なく表示可能でした。
また2010年代後半ではスマートフォンの隆盛、とくにAndroid・iOSはほぼ市場を独占したことにより、Firefoxだけがシェアを下げていき、Google Chrome・Safariは隆盛を極めることとなります。ですので、基本的にはこの2つのブラウザで正しく表示・動作していれば問題ないという開発者の意識もありました。

こういった問題はやはりMicrosoftも認識していたのでしょう。Edge公開から3年後の2018年末には新Edgeの開発を発表し、開発者のフィードバックを重ね、2019年1月、正式に新生「Microsoft Edge」が誕生しました。この新Edgeが最も改良された点、それはレンダリングエンジンを従来の「EdgeHTML」から「Blink」、つまりGoogle Chromeと全く同じ仕様にしたことです。

これにより、ブラウザ間の差異はほとんど解消されたため、開発者にとってもほぼ負担はなく、ユーザーにとっても使いやすくなりました。

 

新バージョンによるメリットは?

開発者にとっては従来の手法通りWebサイトやサービスを開発することで最適な表示となりますが、ユーザーにとっても、今まで使用していたGoogle Chromeのブックマークなどを含めたデータ移行の簡素化や、同じ拡張機能が使用できるようになります。さらに、かつてInternet Explorer5まで利用できたMac版も、新エンジンの恩恵を受け、Edge for Macとしてインストールが可能です。

ただ、それ以上に、おそらく最も恩恵を受けるのはMicrosoft自身でもあります。というのも、それまで開発してきた独自エンジンのアップデートは不要となり、「Blink」はGoogle主導の開発体制になるため、セキュリティ対策やバグフィックスに時間を取られることはない、というわけです。結果的に自社技術を置き換えてでも享受したいメリットであり、過去のシェア争いよりも最適化を優先することが長期的な利益につながる、と判断したのだと思います。

 

これからのEdge、あるいはブラウザの問題点

共通エンジンを組み込み、新たに生まれ変わった新Edge。これでブラウザ間の問題もなく、開発者・ユーザー双方にとっても最適な解決となったかと思われますが、別の懸念が生まれてきました。
それは「Google一強時代」が到来しないか、ということです。

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上述の通り、PCではGoogle Chromeのシェアが圧倒的になりつつあり、日本国内含め、6割以上を占めるまでになりました
さらにモバイル機器、とりわけスマートフォンの場合、日本国内はiOSが6割以上を占めていますが、世界全体で見るとその割合は逆転し、とくに新興国に限っては8割を超えるまでになりました。これはより安価なAndroid製品が多く市場に出回っているためと考えられています。
こういった状況から、まさに過去のMicrosoft、IEと同じ状況が起きようとしているのではないかといった危惧も多く見られます。一時はGoogleEarthなど、Chromeでないと利用できないWebサービスもあり、Web標準はともすれば”Goolge 標準”になる可能性もあります。

そういった中でのEdgeの立ち位置は前途多難と言えるかもしれません。とはいえ、もはやGAFAGAに対抗できる組織は稀で、その中でも過去の栄光と失敗を踏まえ、よりWebの発展に貢献できるのはMicrosoftにおいて他ならないのではないでしょうか。
いずれにせよ、いち開発者の端くれとして、Web業界は常に開かれた世界であってほしいものです。